研究概要 |
1.南西諸島を含む熱帯インド・太平洋各地には,生きた化石種,あるいは未知の貝類が多数生息する.本研究では海底洞窟貝類群の起源を明らかにするため,これらの貝類の分類学的研究を進めている.本年度は,熱帯インド・太平洋の海底洞窟特有の巻貝類の1グループであるシラタマアマガイ属の殻体および軟体の解剖学的研究に関する成果が得られた.同属はこれまで現生種2種,化石種1種が知られ,アマガイ科クサイロカノコガイ亜科の1属とみなされていたが,殼体のSEMによる詳細な観察(殻構造,胎殻の形態など)の結果,新たな現生2新種と1未同定化石種が見いだされ,それらは河川域に生息するコハクカノコガイ類に近縁で,それらと同一の科(コハクカノコガイ科)を構成することが明らかとなった(Paleontological Research誌に掲載済み).また,シラタマアマガイ属とコハクカノコガイ属の諸種の解剖学的研究から,コハクカノコガイ属はシラタマアマガイ属から由来したことが明らかとなり,さらにコハクカノコガイ属は退化的な目を持つことから,海底洞窟→地下水域→河川域とうい新たな陸上進出の経路があることが明らかになった(Zoological Scripta誌に投稿中). 2.本年度はもう一つの海底洞窟特有のクチケレエビスガイ科巻貝類の分類学的研究を進め,海底洞窟にのみ知られる1新属2新種を見いだした(The Veliger誌に投稿中).この新たな属は,クチケレエビスガイ科の深海域に知られるLarochea亜科の既知2属に近縁であることが明らかとなり,今後の解剖学的研究が進めば,新属の起源が解明される見込みである.
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