研究概要 |
本年度はオビキンバエ亜科全体の系統解析を実施するため,カナダ農務食糧省中央実験農場昆虫部CNICとオーストラリアCSIRO、ANICに所蔵されている標本検査のため現地に赴いた.カナダCNICでは主に新北区,新熱帯区の42タクサの標本を比較解剖し,41の形態的特徴を分析し,祖先形質(0)中間(1)子孫形質(2)の三つの形質状態にスコアして,PAUP法により系統解析を行った.同様の解析をオーストラリアANICに所蔵されているオーストラリア・オセアニア区のオビキンバエ28タクサについて解析した.また,東洋区産オビキンバエ属の5種について,ミトコンドリアDNAのCOIからCOIIにいたる約2,300の全塩基配列を決定し,これまで判っている8種を加えた13種について分子系統樹を作製した.その結果,新大陸には3つの種群があり,一つはクロキンバエ族Phormiiniに相当し,これよりHmilucilia+Chloroproctaが分岐し,これにParalucilia+Cochliomyia+Compsomyiopsが結びつくことが判明した.後者2群はそれぞれ独立した族に分類されるべきものであると考えられる.オーストラリア・オセアニアのオビキンバエはこれまで1属とされてきたが,外部形態による系統解析でもミトコンドリアPNAによる分子系統解析でも少なくとも4つの種群に分けられべきものであることが示唆された.
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