研究概要 |
本研究ではELF電流刺激により免疫細胞の機能を制御することを目指し,基礎検討として,マクロファージの貪食能に対してELF電流が与える影響に関して検討している.本年度は以下の検討を行った. 1.in vitro直接通電実験による実験パラメーターの検討:マウス腹腔マクロファージ浮遊液と蛍光ビーズ懸濁液を混合し,電極を直接挿入した系で通電したときの貪食能の変化を調べた.通電条件として,通電電流密度を10-100μA/cm^2,周波数を10-100Hz,通電時間を10sec-1hの間で変化させ,通電していないsham群の結果と比較した.何れの場合も通電した場合は明らかに貪食ビーズ量は減少していたが,通電条件の差による明らかな違いはみられかった. 2.電界曝露実験のための電界強度の検討:動物実験用電界発生装置によるマウスへの電界曝露を想定し,誘導される電流密度を検討した.マウスは体表面積が小さく,現存のシステムでは十分な誘導電流を得ることは困難であることが示された.電極形状の変更等による誘導電流密度の増加が期待できるので来年度の検討課題とした. 3.in vitro変位電流実験系の開発:体外からの電界刺激を想定し,電極を絶縁して容量結合による変位電流によりマクロファージを刺激するための実験用セルを設計,製作した.電圧源として現有の動物実験用電界発生装置のものを流用し,数10μA/cm^2の電流密度で刺激可能であることを示した.来年度は変位電流による貪食能への影響を検討する予定である. 本研究により,ELF電界による免疫細胞機能制御の可能性が示された.より臨床に近い条件での検討となる来年度の研究準備も順調に進行中である.
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