研究概要 |
本研究では,市販の低周波電界治療器レベルの高電界を想定したELF高電界刺激による免疫調節の可能性を探ることを目的とし,基礎検討としてマクロファージの貪食能に対して及ぼすELF電気刺激の効果をin vitro実験で検討した.本年度は以下の検討を行った. 1.in vitro変位電流実験系の開発 体外からの電界刺激を想定し,電極を絶縁して容量結合による変位電流によりマクロファージを刺激するための実験用セルを設計,製作した.市販の低周波電界治療器(最大10kV印加可能)を使用し,数10μA/cm^2の電流密度で刺激可能であることを示した. 2.in vitro変位電流通電実験による検討 マウス腹腔マクロファージ浮遊液と蛍光ビーズ懸濁液を混合,製作した実験用セルに注入し,通電したときの貪食能の変化を調べた.通電条件として,通電電流密度を35μA/cm^2(印加電圧4〜5kV),通電時間を30分または1時間とした.周波数は50Hzである.貪食の対象は蛍光ビーズ(直径0.5μm)として貪食量はフローサイトメトリーで計測,評価した.通電していないsham群と結果と比較した結果,通電した系ではビーズを貪食したマクロファージの割合が減少すること,特に多量のビーズを貪食するマクロファージの割合が減少することが示された. 本研究により,市販の低周波電界治療器レベルのELF電界がマクロファージの貪食能を抑制するの可能性が示された.マクロファージの貪食能の変化は,抗原提示を通じて免疫応答全体に影響を与える可能があると考えられ,高電界による免疫応答抑制の可能性があることが示唆された.今後の研究課題となるが,マクロファージの活性全体が抑制されているのであれば慢性炎症の軽減等に有用であろうと思われる.
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