研究概要 |
1.目的:2000年のミレニアムの今日、移動通信、衛星通信の急速な発達、普及によってGHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が嘱望されている。しかし既存のスピネル系フェライトではスネークの限界によりGHz帯では機能しない。それ故この要望に対応するに、GHz帯域に高透磁率、かつ磁気共鳴周波数を有するマグネトプランバイト(M)型やw型フェライト等を利用することによって優れた電磁波吸収体の開発が可能であると考えられる。従って本研究では六方晶系フェライトの複素透磁率およびM型フェライトの磁気共鳴周波数に及ぼす組成、組織、添加物の影響を調べ、両フェライトの電磁波吸収体としての応用を検討する。本年度は(1)磁気共鳴周波数の低減をもたらす添加元素の探索、(2)電磁波吸収特性の広帯域化を主眼として異方性磁界の異なるフェライト複合体を作製して磁気共鳴の周波数依存性について検討した。 2.実験方法:1400〜1700Kにおいて各種フェライトを焼成した。得られたフェライトの粗粉砕、或いは微粉砕して種々の粒径の粉末とし、フェライト配合比60〜80mass%のエポキシ樹脂との混合複合体を作製した。電磁波吸収特性はネットワークアナライザーで測定し、組織は光学顕微鏡、SEMで観察した。 3.結果:(1)置換元素量の増減により磁気共鳴周波数を変化させることができた。特に(Me_<0.5>Mn_<0.5>)(Me=Ti,Sn,Zr)で置換したM型フェライト焼結体は優れた電磁波吸収特性を示した。(2)(Me_<0.5>Mn_<0.5>)(Me=Ti,Sn,Zr)で置換した系において1573K、10時間焼成し、150〜300μmに粉砕後、フェライト粉末配合比70mass%の樹脂複合体は帯域幅7.3GHz、ΔB=41.7%の広帯域な電磁波吸収特性が得られた。(3)(Me_<0.5>Mn_<0.5>)量を変化させることにより広帯域特性を維持したまま周波数域を変化させることができ、(Ti,Mn)_4^<3+>でFe^<3+>を置換したM型BaフェライトではXバンドに対応できる電磁波吸収体の作製に成功した。
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