研究概要 |
小形電気機器から生じる電磁ノイズの制御を目標として,電気接点の放電現象とノイズ発生現象を総合的に分析するアプローチのために,実時間並列測定システムを開発し,特に,電気接点表面上のアーク放電痕と発生ノイズの関連を分析する視点を初めて取り入れた。実験では,小形電気機器に含まれる整流子モータの整流子(Cu)とブラシ(C)の開閉電気接点モデル,および一般的な異種対向電気接点であるAg-Pdの試料を用い,電極開離時の電源線に及ぼす伝導ノイズを観測した。 電磁ノイズの波形とスペクトル及び電気接点間電圧・電流波形,電極表面などの同時並列的計測により,ノイズのAPD(振幅分布確率)や放電現象の相互関係を分析し,その結果から,材料条件によって散発的および継続的バーストノイズの二種類の発生パターンに分類できることと,大きいノイズを伴う放電の発生条件を明らかにすることができた。散発的バーストノイズが発生する場合に,ノイズが発生している間に電極表面に溶融痕が形成されることを明らかにし,溶融痕の形成を抑制することによりノイズの発生を制御できる可能性を提案した。ノイズが継続的に発生する場合について,ノイズが大きい区間の時間が,C-Cu電極では陰極表面の放電痕の面積と,Ag-Pd電極では陽極表面の変色部分の面積とそれぞれ相関を持つことを発見し,ノイズ発生の制御について,アーク継続時間を抑制すべきであることを提案した。 実際にノイズ制御の実証実験を行い,散発的バーストノイズの場合には電極の接触面積を小さくすることにより,また,継続的バーストノイズの場合は電極を太くすることにより,ノイズの継続時間を短くできることを確認し,形状を考慮した電極設計がノイズ発生の抑制に有効であるという提案を実証した。
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