本年度はビルディング内での伝導性、放射性電磁ノイズの低減技術について検討を行った。 (1)導線および薄膜金属板が併設している場合の導線上の有効電力伝搬特性の明確化 2本の導線が併設されている場合、電磁ノイズの有効電力は起誘導線と被誘導線間でお互いに授受しながら伝搬することを理論と実験結果を照合することにより確認した。このことから、グラウンド面上に布設されている導線とグラウンド間を伝搬する有効電力は、両端開放された導線を当該導線に絶縁層を介して密着するだけで有効電力を低減することができ、しかも密着した導線長に応じて周波数選択的に20〜30dBもの有効電力低減効果が得られることを確認した。そこで、この併設導線を併設金属板に替えて同様の理論計算、すなわち、導線-グラウンド帰路回路と金属板-グラウンド帰路回路間の結合問題としての近似計算を実施した。その結果、併設金属板の厚さが表皮厚より十分薄く表面抵抗が数百Ω程度になると広帯域にわたり低減効果が発生することが示唆された。この現象は銅板と薄膜金属板を用いた実験によって得られた昨年度の結果を極めてよく説明しており、低減の理由は併設導線間の結合問題と同様に蒸着アルミシートーグラウンド間に有効電力が受け渡されてそこで消費された結果であると結論づけられた。 (2)薄膜金属板併設による放射電磁界抑圧特性の明確化 上記検討では、薄膜金属板のような抵抗被膜-グラウンド帰路回路で消費されるメカニズムが放射なのか、熱損失なのかが不明である。もし、放射による消費であれば、抵抗被膜の導線への併設によって2次放射が発生し、導線からの電磁波放射の抑圧対策には使えないことになる。そこで、グラウンド上に布設された導線からの遠方電磁界が抵抗皮膜の併設によりどのように変化するのかを実験した。その結果遠方電磁界の最も強く現れる布設導線の延長線上の垂直電界において、広帯域にわたり10〜20dB程度の大きな電界強度抑圧効果が得られた。このことから、抵抗被膜は熱損失による有効電力低減に至っており本質的に放射電磁界も抑圧できる可能性が示唆された。ただし最終結論は、放射電磁界をグラウンド面上の半球面領域で測定し、抵抗被膜がパッチアンテナの効果を有していないかどうかを確認し下す必要がある。
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