研究概要 |
高齢者および障害者の健康と運動機能を維持するために,屋外歩行は一訓練法として広く推奨されている.しかし,北海道などの積雪地域では,冬期間の屋外歩行は転倒の危険から回避されがちである.寒冷地居住者の冬期間の身体活動量の実態と運動機能の変化を調査する目的で,屋外歩行が自立した60歳以上の健常高齢者および脳卒中片麻痺患者を対象とし,冬期と夏期の2時点において歩行量と身体活動量を計測し,運動機能を評価した. 健常高齢者5名(女5,平均年齢63.8歳;以下,健常群),脳卒中片麻痺患者5名(男4,女1,平均年齢67.4歳;以下,片麻痺群)について,平成11年12月〜平成12年2月の冬期および平成12年6月〜8月の夏期の2回,歩行・身体活動計測と運動機能評価を施行した.歩行量の計測には万歩計を,身体活動量の計測には加速度センサーによる身体活動連続測定器を使用した.運動機能評価は歩行能力評価として10m歩行時間を,耐久能評価として6分間歩行距離を,下肢筋力評価として連続立ち座り時間を,立位平衡機能評価としてタンデムバランスを行った. 片麻痺群において冬期に歩行量が有意に減少していた.個別の検討では,片麻痺群の3例で冬期の歩行量が減少しており,その内の2例が身体活動量の有意な低下を伴っていた.歩行量が低下した全例で冬期の10m歩行時間が延長した.身体活動量が低下した例では6分間歩行距離の短縮と連続立ち座り時間の延長が追加された.即ち,冬期に歩行量が減少した片麻痺患者では下肢運動機能が低下し,身体活動量の低下を伴うと運動機能の低下はより顕著となった.健常群の歩行量,身体活動量,運動機能は,冬期と夏期の間に有意差を認めなかった.寒冷地に居住する片麻痺患者では,冬期間の運動機能の維持を図る上で特別な配慮が必要と考察された.
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