研究概要 |
個性習熟型パワーアシストシステムを構築するためには,操作者の運動特性をシステムが学習し,それに基づく力制御が必要不可欠である.しかし,その運動特性は個人により大きく異なる.本年度は,とくに操作者の力と位置の感覚の解析を行い,個人差の学習システムの構築を行った.具体的には,以下の二つのサブテーマに関する研究を行った. (1)表面筋電位(EMG)信号信号を用いた操作者の負荷力センサシステムの構築 操作者が発生している力は,ひずみゲージなどの力センサで測定することは可能であるが,疲労などの影響による操作者の主観的な負荷は測定不可能である.また、同じ動作を行っていながらも違う筋肉を使うことにより疲労の影響は変化する.したがって,個人習熟型パワーアシストシステムの開発においては,筋肉に与えられる負荷の測定が課題となる.本年度は、EMG信号と力の関係の解析を行い,EMG信号を入力,負荷を出力するニューラルネットワークを構築した.結果として,この手法により個人差への対応を可能とする負荷センサシステムの構築が可能であることを示した. (2)操作者の運動知覚の誤差の解析 操作者の運動特性,とくに位置や速度に関する誤差を解析し,その誤差を制御に利用することによって操作者にとって使いやすいパワーアシストシステムの構築が可能となる.ここでは,日常生活で頻繁に用いられる腕,とくにひじ関節に注目し,様々な状況における誤差および個人差の解析を行った.さらに,解析結果を利用した制御則を構築し,パワーアシストシステムの簡単な位置制御を行った.その結果,誤差を許容することにより,操作者にとっては自然であり,パワーアシストシステムにとっては負荷の小さい,すなわち高速な動作が可能なシステムが構築できることを示した.
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