研究概要 |
本年度は,以下の三つのサブテーマに関する研究を行った. (1)表面筋電位(EMG)信号を用いた操作者の運動知覚に基づく力制御 個人習熟型パワーアシストシステムの実現においては,物理的な負荷のみではなく,疲労や細かな運動の変化といった運動知覚・運動心理などの主観的な負荷力を考慮しなければならない.本研究では,この主観的負荷力の表現方法としてEMG信号を利用する手法を提案し,主観的負荷力のフィードバックを利用した力制御手法を構築した.結果として,疲労などの影響に応じて,操作者に与える負荷を変更することにより,自然な操作が可能になることが検証された. (2)操作者の運動知覚の解析とモデル化 操作者の運動知覚特性,とくに位置,速度,加速度に関する誤差を解析し,その誤差を制御に利用することによって操作者にとって使いやすいパワーアシストシステムが可能となる.本年度は,手首-ひじの2関節3自由度系を対象とし,それらの相互的な影響について解析・モデル化を行った.さらに,得られたモデルを利用して位置・速度を運動知覚に応じて変更する制御則を構築し,パワーアシストシステムの制御を行った.その結果,タスク実行に関してより高精度・短遂行時間という,操作者にとっては自然な操作系が実現された. (3)パワーアシスト装置の開発と制御 パワーアシスト装置として,小型・軽量の装着型1自由度システムと,外部型の1自由度直動運動システムを開発した.また,上で得られた結果を個性習熟型パワーアシスト制御手法として再構成し,このパワーアシストシステムの制御手法として適用した.結果として,操作者の運動知覚を利用し,操作者の自然な動きに追従し力を補助する,個性習熟型パワーアシストシステムが実現された.
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