四肢の機能障害では、患肢を使用する動作遂行時に効率が低下し、呼吸循環系に対する負荷を増加させると考えられる。運動負荷様式が異なる場合(運動負荷と間歇的負荷)では、連続負荷で、酸素消費量・疲労度が大きくなる傾向であった。また、等張性運動と等尺性運動では、等尺性運動が等張驪助より心肺系に強い負荷をかけやすいというこれまでの報告は、低強度負荷では必ずしも当てはまらず、等尺性運動を間歇的に行う訓練プログラムが有効である可能性を示唆する成績が得られた。また、プリン体代謝過程から生産さるヒポキサンチンを過酸化化合物増加状態の指標として測定することにより、運動負荷時の組織障害を推定する指標として、血清ヒポキサンチンが有用である可能性が示唆された。 心臓の各拍動間の変動を解析する心拍変動法を用い、急性心筋梗塞、患者に運動療法を継続させて検討したところ、安静時の副交感神経活動亢進、負荷時の交感神経活動抑制、心拍応答における応答性改善を認め、心拍変動を運動療法の効果判定に利用できることが明らかとなった。同様の成績は、肥満患者、脳梗塞片麻痺患者等でも観察された。 軽度の片麻痺を有する脳梗塞患者では、低強度の運動負荷でも自律神経の変化が認められる事実から、特に高齢者での訓練時における呼吸循環速度は低強度でも刺激されると考えられ、身体機能の維持・向上のための運動としては、低強度でも効果を得られる可能性が示唆された。 健常者における睡眠をとらない状態(断眠)での運動負荷試験成績から、断眠時には交感神経系の活動が亢進する傾向があり、身体機能とは関係のないストレスが、肢体不自由者の呼吸循環応答にどのように影響するかについては、今後さらに検討が必要であると考えられる。
|