研究概要 |
【研究の日的】脳卒中で骨格筋麻痺を持つ患者の下肢の筋肉に,放射線同位元素でラベルしたブドウ糖(18F-fluor-deoxy-glucose,以下FDG)が,15分間の歩行でどの程度取り込まれるかをポジトロン断層装置で測定し,PET画像からブドウ糖の取り込み量と取り込まれる筋肉の種類・場所やその経時的変化を明らかにする.これにより麻痺筋の回復過程を筋肉のブドウ糖代謝の側面から明らかにする. 【本年度の研究計画および結果】初年度は,健常な被験者(11名)を対象に歩行による下肢筋のFDGの取り込み量を測定し,それより求めたSUR(standardized uptake ratio)より,歩行負荷による下肢筋への標準的な取り込み量を知った.昨年と今年は,脳卒中の患者9名に対して,歩行でFDGがどの程度筋肉に取り込まれるかを測定した.そして麻痺側と非麻痺側の間および健常者との間で比較を行い,歩行時の筋活動の特徴を検討した.片麻痺者では,麻痺側と非麻痺側との間に下腿筋・殿筋にて有意差を認め,麻痺側で筋活動が少なかった.大腿四頭筋の筋活動は少なく,麻痺側・非麻痺側において有意差は見られなかった.健常者と片麻痺者との間で比較すると,麻痺側においては,下腿筋と殿筋の筋活動に有意差があり,片麻痺者麻痺側で筋活動が少なかった。大腿筋ではあまり差は見られなかった。非麻痺側においては,後脛骨筋と内側ハムストリングに健常者よりも大きい筋活動が見られた.またPETのトランスミッションスキャンモードのみで,別の脳卒中片麻痺患者9名の全身を撮像し,全身の肢節の体積と重量を計測した.麻痺側と非麻痺側の筋肉の密度と肢節の重心位置を算出し,麻痺側と非麻痺側を比較した結果は,上腕のみで体積の減少と重量の減少が見られ,重心位置が遠位に移動していた.その他の肢節では体積,重量,重心位置で差はみられなかった.
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