研究概要 |
硬膜外圧迫による脊髄不全損傷モデルにおいて、コントロール、損傷後24時間、3日、1週、2週、4週、6週、8週で脊髄損傷部およびその頭尾側それぞれ12mmずつ摘出し、AGPC法にてtotal RNAを抽出した。逆転写反応の後、neurotrophin-3(NT-3)に特異的なプライマーを用い、PCR法にて20サイクルの増幅を行った。このさい同一のプライマーを競合するように調製したDNAを一緒に反応させ競合的PCR法として、NT-3 mRNAを定量した。また同様の損傷後時間経過で4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定し、脊髄を摘出、横断面パラフィン切片を作成した。ラットNT-3 cDNAよりジゴキシゲニンラベルcRNAプローブを作成し、in situ hybridizationを行った。また連続切片にて細胞マーカー(astrocyte:GFAP,oligodendrocyte:CC-1,microglia:tomato lectin)の免疫染色を行い、細胞の種類を同定した。 競合的PCR法による定量の結果、損傷部ではNT-3 mRNAは損傷後増加傾向を示し、2週後にはコントロールの約2倍とピークを迎え、その後漸減傾向を示した。損傷後2週、4週ではコントロールに比し有意差をもって増加していた。尾側においても同様の変動がみられたが、頭側では有意な増加はみられなかった。 in situ hybridization法ではNT-3 mRNAは灰白質の神経細胞のみならず、白質の小型の細胞にも発現していた。連続切片の免疫染色では、これらはGFAPまたはCC-1陽性であり、astropcyteまたはoligodendrocyteであると考えられた。 NT-3は脊髄損傷後急性期を過ぎてから神経細胞・グリア細胞において発現が増加しており、神経修復との関わりが示唆された。
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