リハビリテーション医学で問題となる長期臥床の廃用性萎縮による骨量減少のメカニズムを解明するためにin vivo、in vitroの両面からアプローチした。in vivoでは生後5、6週Wistar ratを用い、右側下肢の大腿神経・坐骨神経切断、腱切断、シャム手術を行った。術後2週間で屠殺し、大腿骨、脛骨を摘出した。pQCT測定は、骨の異なった場所全骨(皮質骨+海綿骨)、皮質骨、海綿骨を別々に測定した。骨幹より骨幹端で荷重軽減により骨密度が有意に低下していたが、これは骨幹端は海綿骨が豊富で、骨幹では皮質骨がほとんどを占めることによると考えられた。海綿骨の体積骨密度の低下は皮質骨に比較して、神経切断ラット、腱切断ラットでそれぞれ、10倍、3倍であった。このことより、海綿骨の方が皮質骨より荷重軽減に感受性が高いことが示された。さらに、骨幹端では荷重軽減により、断面積、stress strain indexが低下した。in vitroでは、荷重軽減の環境を設定するため、1軸回転型クリノスタットを製作し、正常ヒト骨芽細胞を用いて、荷重軽減(模擬無重力)が骨芽細胞に与える影響について検討した。荷重軽減開始後4日目において、コントロールとの間で、細胞数の差はなく、荷重軽減は、細胞増殖に影響を及ぼさないことがわかった。また荷重軽減群では、骨芽細胞によるサイトカインIL-6、IL-11の産生に変化はなかったが、プロスタグランジンE2、総オステオカルシン、Gla化オステオカルシンの産生が低下しており、荷重軽減は骨芽細胞の分化を抑制したと考えられた。骨形成マーカーのひとつであるオステオカルシン遺伝子のmRNA発現量は、荷重軽減群ではコントロール群に比べて約33%低下したが、培地中にビタミンK2を投与することによって、荷重軽減によるオステオカルシン産生低下を防止することができることがわかった。
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