立位位置の知覚は、体性感覚情報が特定の位置で急変することを手がかりとしてなされていることが考えられた。そこで今年度は、安静立位から体を前傾および後傾させたときに、足底圧や筋活動が急変した位置とこの急変を知覚した位置との関係について検討した。 対象は男子大学生11名である。前傾では母指圧および母指外転筋初期活動の急増と母指球の最大圧を知覚させた。後傾では大腿四頭筋および前脛骨筋初期活動の急増および踵部圧の急増を知覚させた。各情報ごとに5回の試行を行なわせ、圧および筋活動が実際に変化した位置とその変化を知覚した位置とを求めた。 前傾では母指圧と母指外転筋初期活動の、後傾では大腿四頭筋および前脛骨筋初期活動の急増が知覚しにくいが、母指球の最大圧の知覚はほぼ正確になされたということを示唆する結果が得られた。そして、母指圧の急増の知覚は、母指球の最大圧の知覚と関連している可能性が示唆された。初期筋活動の知覚においては、初期急増の後に続いた急増を知覚していた可能性が高いことが示唆された。また、初期筋活動急増の知覚には個人差があることが明らかとなり、若干の同一被験者は各筋に共通して初期の急増をほぼ正確に知覚していたことを示唆する結果も得られた。前傾、後傾ともに感覚情報が急変したことを知覚した位置は、先行研究における立位位置の知覚能が高い位置と一致した。このことから、立位位置の知覚能が高いところでは、足底圧情報や足部の筋感覚情報の急増を手がかりとしている可能性があることが示唆された。 来年度は、足底部を部位別に冷却することにより局部的に圧情報の入力を低下させた状態で体性感覚情報の急増を知覚させる。そして、立位位置の知覚に対する母指球圧情報を中心とした足底圧情報、および筋感覚情報の役割についてさらに詳細に検討する。
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