脳血管障害片麻痺患者や慢性腎不全透析患者などの身体障害者では、目先の障害のみではなく、栄養状態や体力を把握して不備がある場合にはこれらの改善を図りつつ医療を進め、合併症の予防、ADL・QOLの向上を目指す必要がある。しかし、現実の医療では必ずしも栄養状態や体力の把握は十分ではなく、retrospective的にこれらがゴール、転帰を左右する大きな要因になっていることを経験する。今回の研究では当初計画していた栄養状態の把握は患者の同意と協力が得られなかったが、体力などに関しては以下の知見を得た。 運動負荷試験は自転車エルゴメーターを用いたが、脳血管障害患者では嫌気性代謝閾値レベルの全身持久力訓練を併用することにより、「酸素不足(酸素欠損)」および「時定数(τon)」(酸素摂取応答)の改善が得られた。また、VO2 peakおよびmax WRの有意な増加、漸増運動中におけるΔVO2/ΔWRの有意な低下(運動耐応能の改善)がみられた。定常負荷とランプ負荷の組み合わせによる運動負荷試験が体力把握に有用であることも示唆された。肢体障害としての脊髄損傷患者によるハンドエルゴメータ負荷では、損傷部位による特性などを明らかにした。他方、腎不全血液透析患者の体力を把握し適切な運動療法を行うためには、運動負荷試験による上記のことなども含めた解析とともに、身体組成(体脂肪量、筋量、骨量、細胞内外の水分量)の解析なども必要と考えているが、未だ症例数は集積されていない。この理由としては、啓蒙活動にもかかわらず透析患者さんは運動療法に対してmotivationを欠除するケースが圧倒的に多いとの印象を受ける。しかし、合併症予防には透析液におけるEndotoxin Filterの使用が多少効果的であった。症例数は少ないが、判明分の最大酸素摂取量と血液所見の関係も報告する。さらに継続研究としたい。
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