脊髄損傷(SCI)による廃用性萎縮筋のmyosin heavy chain(MHC)アイソフォームタンパク発現について、SDS-PAGEにより1)whole mass、2)single fiberという視点から検索した。 1)損傷後のヒラメ筋は、術後徐々にMHCIの減少、一方でMHCIId及びMHCIIbの発現、増加が見られ、長趾伸筋では、MHCの変化が遅れて出現した。両筋ともslowからfastへMHCタイプが移行した。 2)single fiber分析では、損傷後、両方の筋ともに2〜4種類のアイソフォームを持つhybrid fiberが出現。Pure fiber:hybrid fiber比はヒラメ筋で93:7(CON)→14:86(SCI 3W)、長趾伸筋で62:38(CON)→30:70(SCI 3W)となった。両筋ともMHCIIを含むmuscle fiberが増加した。 異なるMHCmRNAとMHCタンパクが同一muscle fiberに存在する報告があることから、MHCtypeの変化は、短期間で連続的に起こると推測される。ヒラメ筋と長趾伸筋のMHC変化様態の違いは、(1)MHC組成、(2)脊髄損傷後の拘縮肢位(末梢神経損傷時とは変化が異なる)によると考えられる。また、ATP-ase染色でも同様な結果が得られ、形態学的にも、生化学的にも観察結果が一致した。尚現在、myosin light chain(MLC)アイソフォーム、トロポミオシンアイソフォームについても研究を進めている。これらの結果は、第36回日本理学療法学学術大会、第40回国際パラプレジア学会、日本適応学会第5回学術集会で報告する予定である。
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