脳卒中患者痙縮の客観的評価における新指標の有用性を検討することを目的に、脳卒中片麻痺患者15名、健常者10名を対象に、両側のヒラメ筋安静時運動細胞興奮性をH反射最大値/M波最大値(Hmax/Mmax)、H反射閾値/M波閾値(Mth/Mth)及び新指標であるH反射増加率/M波増加率(Hslp/Mslp)を用いて評価した。 その結果、麻痺側、非麻痺側の両側からH反射が導出できた9名における各指標の平均値を比較すると、Hslp/Mslpにのみ、統計的に有意な差が認められた。さらに、各指標をBrunnstrom stage別に比較すると、Hslp/MslpはBrunnstrom stageの各ステージにおける痙縮の程度と良く相関していたが、逆にHth/Mthは、全く相関していなかった。 一方、健常者では、両側の比較において、いずれの指標にも有意差は認められなかった。 以上の結果より、安静時運動細胞興奮性の観点からの脳卒中患者痙縮の評価において、個体内、個体間の比較のどちらの場合においても、Hslp/Mslpの有用性が示された。さらに安静時において非麻痺側からH反射を導出できない被験者も麻痺側からは低値ながらも導出できたことより、片麻痺患者では、麻痺側のみで評価するのではなく両側で比較することにより、痙縮をより的確に評価できるものと考えられた。 今後は、痙縮評価において今回有用であることが示されたHslp/Mslpを用いて、痙縮の発現の原因の一つとして近年注目されているシナプス前抑制との関連について検討していきたい。
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