研究概要 |
平成11年度の本研究は,重力免荷性の廃用状況を想定し,ラット・後肢懸垂法を用いた筋廃用群(1.廃用2週間群,2.廃用4週間群)およびその回復群(3.廃用2週間後の回復2週間群)にみられるヒラメ筋ミトコンドリア(以下,Mit)の変化について検索した。そのうち明らかにされた諸点について下記に示す。 1.筋ミトコンドリアDNA(以下,筋mtDNA)の検索:nestedPCR法によって変異mtDNAの有無の決定を試みた。変異を示す断片は廃用2週間群(変異出現率は3/4)で最も高く,廃用4週間群(1/2)においても変異の断片が確認された。一方,対照群(0/4)や2週間の廃用後に2週間の自由荷重を行った回復2週間群(0/3)では,変異を示す断片は検出されず,変異mtDNAには回復の影響があると推測された。この断片は放射線照射による培養肝細胞に増幅(同条件)された断片と同レベル(末発表)であり,欠失であると推測された。 2.骨格筋の超微形熊学的変化:透過型電顕像と光顕像の観察を行った。(1)廃用4週間群は2週問群に比べて横紋筋線維の変性像がより明瞭で,この筋Mitは軽度の萎緒,一部の筋Mitの外膜やクリステの内部に高電子密度性の板状構造物の出現,クリステと筋小胞体構造の不鮮明化,膨化・変性像などを生じた。また,筋原線維の断裂像は,Z線領域の近くで,細いアクチンフィラメントの融解・消失によるものが多かった。(2)廃用2週間後の回復2週間群では,筋Mitの膨化・空胞化や高電子密度化などと,その周辺域の筋Mitのクリステに高電子密度性の板状構造物がより強く頻発した。光顕像による小空胞の多発部位を,低倍率電顕像で全体をみると多数の小空胞が出現し,廃用群より組織所見はむしろ悪化したものであった。これは,前述の筋Mit変性・消失,小胞体の拡大,筋原線維の融解・消失に由来している点が明瞭であった。
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