研究概要 |
平成12年度の本研究は,2週間の筋廃用(ラット後肢懸垂法)と同時に目的筋の持続的伸張をおこない,筋萎縮の程度と,その後の自然回復に関与する影響について検討をおこなった.後肢懸垂は片側について施行し,後肢全体をギプス固定により足関節を底屈位(SOLは筋短縮位)また背屈位(SOLは筋伸張位)にした。その後,ギプス固定を除去し自然荷重による回復を1週間おこなった.検索の目的筋は後肢ヒラメ筋(以下SOL)とし,(1)筋湿重量,(2)筋組織から総RNA抽出してその濃度の測定,(3)nested PCR法による変異ミトコンドリアDNA(以下mtDNA)の有無について検討した。そのうち明らかにされた諸点について下記に示す。 (結果) 1.筋湿重量;固定(廃用を含む)により筋伸張されたSOL(0.15g)は対照側SOL(0.14g)と比較して増加傾向にあり,筋短縮されたSOL(0.11g)は明らかに減少し,自然回復により筋伸張SOL(0.15g)に変化はなく,筋短縮SOL(0.12g)はわずかな増加傾向があった. 2.総RNA濃度;固定(廃用を含む)により筋湿重量あたりの総RNA濃度は,筋伸長されたSOLでは増加(10%)し,筋短縮されたSOLは28%の減少,自然回復により筋伸張SOLに変化はなく,筋短縮SOLはわずかな増加傾向があった. 3.筋ミトコンドリアの変異(欠失)変化;懸垂・固定により筋短縮および筋伸長されたSOLにて変異を示す断片が認められ,一方対照SOLと自然回復SOLで変異変化は検出されなかった. (考察) 筋活動がない状態で,筋伸張がなく筋短縮した肢位の固定は総RNA発現の影響はみられず筋萎縮におちいることが考えられた.自動的な筋ストレッチングや筋収縮の低下,長期の臥床,ギプス固定においては急速に筋萎縮は進行し筋量は低下する。これはタンパクの変性が進み,タンパク増生のための遺伝子発現・転写が低下するため,筋ストレッチングはこの抑制効果として期待される.今後はフリーラジカルと筋タンパク増生の発現状況を加味した検討が必要とされる.
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