研究概要 |
平成13年度の本研究は,正常筋と後肢懸垂法(2週間)によって作成した廃用筋に対する走行運動刺激に注目し,筋ミトコンドリアDNAの変異,骨格筋の超微形態学的変化を中心に比較検討した。 (方法)筋廃用モデルは2週間とし後肢懸垂法を用いた。その後,(1)急性運動群:正常ラットは40m/分,廃用ラットは20m/分,20分間を1回強制走行させ,直後,24時間,2日,3日,および6日後までの経時的変化,(2)持久運動群:予備走行を連続5日の行い,正常ラットは40m/分,廃用ラットは20m/分にて40分間以上のの持久走行・5日間強制する群に分けた。検索の目的筋は後肢ヒラメ筋とし,その(a)筋ミトコンドリアDNAの変異の検索,(b)筋の超微形態学的変化を観察した。 (結果)(1)筋超微形態変化;急性運動では,正常筋でもミトコンドリアの外膜の破綻,筋原線維の断裂がみられたが廃用筋ではミトコンドリアの空胞化,強い筋原線維の断裂が確認された。持久運動は正常筋で大きな変化を示さず,廃用筋では筋原線維の断裂像,ミトコンドリアと筋小胞体系の変性所見がみられた。(2)筋ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変化:正常筋に対する急性運動では変異を示す断片(7,052塩基対の欠失)が運動直後群で確認されたが,24時間以降は確認されなかった。廃用筋でも同様の結果であった。一方,持久運動では全群でmtDNAに欠失は確認されなかった。 (考察)廃用と急性運動は筋組織変性とmtDNA変異を引き起こし,廃用筋に対する運動療法には,酸化ストレスを増加させるような急激な運動は禁忌となり,持久運動や筋伸張と同様に有効であることが示唆された。 また,成果の一部は,XXX European Muscle Conference (Pavia, ITALY)で発表し,各国の筋研究者から有意義な助言(IGF-1, MGFとの発現比較)を頂いた。
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