摂食嚥下および咀嚼運動における感覚運動野の脳賦活状態を脳機能画像であるfunctional MRI(以下fMRI)を用いて解析することによって、摂食に関わる様々な脳活動に関する情報を得ることが出来る。我々は、このfMRIを用いて、視覚刺激によって摂食嚥下障害者の摂食意欲を増大させ円滑な咀嚼運動の営みを行えるようにするための刺激パラメータを設定する目的で、この申請における研究では、視覚刺激を与えた場合の咀嚼運動における第1次感覚運動野(SM1)および大脳皮質の運動関連領野である補足運動野(SMA)の賦活状態を、fMRIを用いた脳機能画像を解析することで、咀嚼運動中のSM1およびSMAの賦活領域の変化と信号強度の変化を求め、賦活に効果的な刺激画像を選択するとともに、刺激画像の違いが賦活領域に及ぼす影響を解析することとした。しかし、実際の視覚刺激による脳活動以前に、想像による脳活動、つまり、刺激のない状態での脳賦活の存在は確認されていない。そこで、刺激のない状態で、咀嚼運動を想像した場合の脳賦活状態を明らかにし、刺激効果のベースラインを求めた。その結果、実際の咬みしめ運動がなくても運動野の賦活が確認された。また、想像による咬みしめは、実際の咬みしめ運動に比べて一次感覚野と一次運動野の賦活領域において25.5%も既に賦活していることがわかった。このことから、視覚刺激をより有効なものにするには、25%以上の賦活効果が認められる刺激方法の開発が求められることがわかった。
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