研究課題/領域番号 |
11835044
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
牧山 清 日本大学, 医学部, 講師 (00139172)
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研究分担者 |
木田 亮紀 日本大学, 医学部, 教授 (00096801)
野崎 幹弘 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70086586)
新美 成二 東京大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00010273)
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キーワード | 喉頭摘出者 / 音声再建 / 新声門 / 発声機能検査 / 高速撮影 / T-Eシャント / 食道発声 / 呼気圧 |
研究概要 |
平成12年度は前年度に整備した研究システムを用いて、各種の喉頭摘出者の検査を行った。各患者の新声門の形態をファイバースコープで、発声時の振動様式を高速デジタル撮影装置で観察した。さらに、発声時の基本周波数、音圧、呼気流率、呼気圧を測定し、気道抵抗の大きさや発声の効率について検討した。また、発声能力を反映する発声持続時間や最大音圧値についても測定した。 単純喉頭摘出後の食道発声患者では発声時には下咽頭収縮筋残存部の高さの咽頭粘膜が狭まり、新声門を形成した。高速デジタル新声門撮影検査により比較的小さな粘膜波動が確認できた。発声持続時間は数秒であった。呼気流率と呼気圧の値は小さく、少ない空気力学的パワーを有効に活用して発声していた。T-Eシャント患者では粘膜波動は大きかった。発声持続時間は正常であった。喉頭・下咽頭・頸部食道摘出者には空腸を利用したエレファント型音声再建術を施行している。この手術を施行した患者では同じ術式にもかかわらず症例により発声機能に差が認められた。エレファント型音声再建例では下咽頭収縮筋が摘出されているために新声門の調節能力が低かった。大部分の患者では粘膜波動を得るために大量の呼気流が必要であった。また、気管から食道再建部を結ぶ、空腸による音声再建部の内腔が狭く、余分な呼気努力が発声に必要な患者もいた。新声門の調節能が良好な例では、舌根部や残存している頸部筋群の調節により間接的に新声門を調節する手段を会得したものと考えられた。手術後の発声訓練や発声指導により優れた発声機能が獲得できることを示唆する症例であった。 喉頭摘出者では手術内容、特に下咽頭収縮筋の残存の有無により発声機能に大きな差が認められた。下咽頭合併切除例では新声門の能動的調節が不可能であるが、発声の方法により発声機能の向上が期待できると考えられた。
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