更衣動作の自立は自己の尊厳を守り、生活意欲や生き甲斐を保つ上で有効である。本研究は機能低下のみられる障害者や高齢者の衣生活の自立促進のための基礎資料を得ることを目的としている。 1.質問紙調査の解析から、高齢者の機能の低下は衣生活行動に影響を及ぼし、(1)加齢に伴う身体各部の可動範囲の狭まりなどが着脱性に深く関わること、(2)衣服調達にも諸問題が生じていることを提示し、機能低下を補う扱いやすいファッショナブルな衣服の提供が求められている現状を報告した。具体的にこれらに対応するため、(3)2000年に実施した調査データの数量化III類を用いた解析から、可動域の狭まり特に上肢帯の加齢に伴う変化が着脱性に強く関わっていることを明らかにした。70歳過ぎるとかぶり式上衣が着にくく、前あき・ウエストゴム、80歳過ぎるとスナップ・ボタン操作が大変など高齢者にやさしい被服設計に有効な資料が得られた。 2.本年度購入したFastrakレシーバを用いて被服設計のための関節可動域測定法を確立するため、トランスミッタから生成される磁場の中で、正確に測定するための操作環境について検討した。磁場に悪影響を与える金属製の物体を排除し、木製の台や箱を使用、トランスミッタを中点とする半円球内のレシーバ操作について設定環境条件がほぼ明らかとなった。今後は、各関節の可動域測定につなげられるよう1軸、2軸、多軸関節と順にひき続き検討を進め、関節角度測定法を確立し、着脱動作と関節角度のかかわりから着脱性の検討につなげ、機能低下のみられる障害者や高齢者の衣生活の自立促進のための被服設計に役立てたい。
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