研究概要 |
骨折の治療やリハビリテーションに際して、運動刺激や物理的刺激を早期から行なうことが非常に重要であるが、我々は、運動および物理的刺激効果を培養細胞と人口骨(HAP)を用いて迅速に調べる方法を開発した。平成11年度に運動および物理的刺激として(1)重力、(2)電磁波、(3)電気刺激の三次元増殖に及ぼす効果について調べ、平成12年度は(4)超音波、(5)放射線、(6)振動刺激について検討した。 (1)重力;重力の影響は細胞を遠心管に入れ300G・10分あるいは2,000G・10分で遠心し、その後に100個のHAPと遠心した細胞を同時に加え混合培養を行った。その結果、培養7週目に300Gにおいては遠心の重力を与えなかった対照の約3倍の三次元増殖が誘導された。2,000Gにおいては、誘導頻度はむしろ低下し対照の2倍であった。(2)電磁波;1Gaussで8時間、16時間、24時間、48時間与えHAPと混合培養し5週後に観察したところ8時間と16時間では対照の2倍誘導されているに過ぎなかったが24時間では10倍、48時間では17倍と非常に高い頻度で誘導さた。(3)電気刺激;自作した電気刺激装置を用いて2〜25μAを12〜24時間通電したが大多数の細胞が死滅したため三次元増殖は誘導されなかった。(4)超音波;細胞に5W/cm^2で3秒、6秒、9秒照射した。HAPと同様に培養し7週後3秒では誘導がなかったが6秒では約4倍、9秒では約5倍の誘導がみられた。(5)放射線;レーザー光線を細胞に1joule(J)〜9J、16Jのレーザー光線を照射しHAPと培養し7週目に観察したところ、1Jでは約7倍、9Jでは約5倍の高い誘導がみられたが、16Jでは対照の1/10となり強い阻害作用を示した。(6)振動刺激;振とう機で17回転/分で振とう刺激を3日間、6日間、12日間与えた後、5週間静置培養したところ振とう刺激を与えなかったものに比べ、3日間で3倍、12日間で5倍、6日間で9倍もの高い三次元増殖が誘導された。 これらの結果、物理的刺激にはどれも適刺激があるということがわかった。
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