研究概要 |
本研究では,木曽馬を用いた心身障害児の乗馬を実施し,その治療効果を工学的計測,解析法を用いて心身両面にわたって客観的,定量的に評価し,科学的な乗馬セラピーの確立をめざすことを目的とした。そこでまず,乗馬セラピーの実態を調査,1960年代から現在までの国際学術誌に掲載された論文を検索した。しかし,その数は10数編を検索できたにすぎず,乗馬セラピーの研究は内外とも発展途上にあると思われた。これらの文献は一般に入手することは容易でなく,本研究ではそのうち9編を邦訳し,今後の乗馬セラピー研究の資料として残すことにした。 また,乗馬セラピーの研究において,乗馬時の人および馬からの生体信号の収集は不可欠である。しかし,乗馬時のヒトと馬からの生体信号を使って乗馬セラピーの評価を行った研究はほとんどみられない。そこには計測技術上の問題が多いためと考えられる。そのため,計測にともなうアーチファクトやテレメータ技術など計測方法に関する検討や改善を行い,実験的な乗馬場面での生体信号を収集する技術開発を行った。次いで,実際に木曽馬を用いて実験研究を行った。具体的には,重症心身障害児に試行的な乗馬を行って,セラピーの可能性を追究した。また,乗馬セラピーの効果を定量的に評価するために,生体力学および電気生理学的方法(加速度,筋電図)を検討した。その結果,筋電図記録は,乗馬というダイナミックな動きによるアーチファクトが当初より大きく,さらなる技術的検討を必要とすることを示した。一方,加速度記録は,ヒトと馬の振動の大きさとタイミングといった運動の特徴を巧く把握できた。
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