研究課題
1999年度における研究成果は以下の通りである。・辻井(研究代表者)はカオス遍歴が発生するような系のうちもっとも単純で数学的に扱いやすいものを数値計算と理論の両面から探求している。成果としてskew tent map と呼ばれる写像を結合した結合写像についてカオス遍歴にあたる現象を数値的に発見し、そのメカニズムを数学的には相空間の不変部分空間におけるリヤプノフ指数の分散がその平均に比べて大きいときに起こる間欠的な引き込み現象であることを示した。さらにこのことから間欠的な引き込みがどのような頻度でどのような長さ続くかを理想化したモデルで数学的に導出し、現在、それがカオス遍歴に現れる間欠的な引き込みに当てはめられるかどうか検証している。・一方、小室(分担者)はロジスティック写像の結合写像においてカオス遍歴を引き起こす分岐現象を発見した。これは、不変部分空間上のアトラクターのバーストによる間欠的な引き込み現象であるといえる。・他の分担者(森、盛田)も拡大的な写像についてのエルゴード的な性質を結合写像との関連で進めている。これらを通じてカオス遍歴現象には不変部分空間におけるリヤプノフ指数の大きな変動が関係しているという共通の認識が得られた。この認識をもとにして、カオス遍歴の数学的な理論を構築することを目標に研究を進めている。
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