研究課題/領域番号 |
11837005
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 泰博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (50292983)
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研究分担者 |
田中 博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60155158)
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キーワード | 抽象化学系 / Abstract Rewriting System on multisets (ARMS) / 分子コンピューティング / P Systems / BE 反応 |
研究概要 |
昨年度まで研究をすすめてきた抽象化学系ARMSに膜の概念を導入した。導入は、抽象化学系内の化学物質のうち1つを膜物質(界面活性剤のようなもの)とみなし、系内の化学反応により膜物質の濃度が増加すると膜が生成するようにして行った。さらに、膜内の膜物質は時間とともに消滅する条件を加えその結果、細胞内部での化学反応により膜物質を生成し自らの膜を維持するようなかたちで「代謝」を行う細胞が自発的に出現してきた。また、細胞内の膜物質の増加にともないランダムな大きさに細胞分裂を起こすようにすると、進化様の現象が出現した。これは、膜を維持することが選択、膜のランダムな大きさへの分裂が突然変異に対応しているためである。また、膜分裂の際に反応規則に突然変異を加え、娘細胞に突然変異の入った反応規則を遺伝させてゆく系の実験からは機能分化様の現象がみられた。また、京都大学農学部の高林純示らとの共同研究では、彼らが現在研究を行っている化学生態系をARMSを用いて解析した。この系は植物-害虫-天敵の3者系であり、従来の生態学のモデルとは異なり植物が食害を受けた場合に食害をうけている害虫を駆除するのに適切な天敵を化学物質(匂い物質)をもちいて呼ぶことにより、積極的に自己防御を行う系である。この系の解析から従来まで、化学物質が害虫には進化的に不利である思われていたが、実は進化的に有利に働く場合があることを発見した。この結果はその後、高林らのチームによって実験生態学的に実証された。
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