不安定点における定性的に新しいタイプの時空カオスの研究を行った。このカオスはある対称変換によって互いに移り変わる空間的に一様な状態をもった縮退系において起こり得る。そのような系が有限の波数をもった空間的に周期的な摂動に対して、対称性の破れをともなった不安定となる場合、不安定点を超えたところでのその振舞いは縮退のとれた系におけるそれとは極めて異なったものになる。その縮退は系の摂動のスペクトルに劇的な変化を引き起こすので、ゼロ波数を中心としたその周りに、ゆっくり変化するモードの新しいサブバンドを生じさせる。新しいサブバンドからの長波長モードと対称性の破れを伴う不安定性に関連した短波長のモードとの間の結合が不安定点でのカオスを引き起こす。いくつかの例(例えば、自由すべり境界での対流、ホメオトロピック配向ネマチック層における電気流体力学的対流、一般化されたバーガーズ方程式など)が考えられる。それらの支配方程式においては、かなりの違いが見られるにもかかわらず、カオスの定性的な性質は同一に保たれる。一般化されたバーガーズ方程式において、コンピューターシミュレーションをベースとしたカオスの詳しい研究をおこなった。リアプノフ数のスペクトラムが固定されたコントロールパラメータに対して、様々な異なるシステムサイズにおいて得られた。リアプノフ次元、及びコルモゴロフ-シナイのエントロピーが計算され、それらがスケーリング性を有すること、すなわち系の体積が十分大きければ体積に比例して増大することを明らかにした。分布関数は、短波長、低周波数でガウス統計を満たすことが示された。
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