3成分の振動反応拡散系において多重スケール時空カオス状態が出現することを理論的に示した。反応拡散系のパターン動力学の研究は従来2成分系または定性的に2成分系で代表できる系の研究にほぼ限られてきたが、多重スケール時空カオスという特異な乱流現象は3成分またはそれ以上の反応拡散系にみ出現できる現象であることが明確に示された。このような反応拡散系は、空間的に密に分布したリミットサイクル振動子や興奮性素子が早い拡散をもつ物質に媒介された間接的相互作用をもつ系と見なされ、化学反応系のみならず振動的活性を示す細胞集団など生命現象ともかかわりをもつことが期待される。 具体的な反応拡散モデルの解析から、このような時空カオス状態の諸性質が明かにされた。その結果、パターンはフラクタルな曲線(曲面)で表され、そのフラクタル次元は系のパラメタとともに連続的に変化する。また、この一般化として空間の2点間の振幅差の種々のモーメントが2点間の距離の関数としてスケール性をもつこと、すなわち多重スケール性が確認された。このような性質は現象論によって理論的にも説明できることが明かとなった。また、振幅の空間微分を表す微分場が空間間欠性を示すこと、そのレベル集合にもフラクタル性が存在すること、フラクタル次元はレベルの値に依存しないことなども数値解析の結果明らかとなった。ただし、最後の問題は理論的には未解決な問題として残されている。
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