研究概要 |
1.数年前にモンテカルロ法を用いて,強交流磁場下のイジングスピン系で磁場の振動数を変化させることにより異なる振動間の転移が発見された.これは,通常の熱平衡系の相転移とは異なり強交流磁場下のスピン系に特有なものである.本研究では,この転移は空間的に一様な振動状態が,振動数の変化に伴って分岐を起こすために生じるものであることを見出し,転移点近傍で臨界動力学を導いてモンテカルロ法で得られている統計特性を説明することに成功した. 2.最近,印可電場によって引き起こされたネマティック液晶の電磁流体力学的対流不安定点近傍で印可電場に乱雑性を加えることにより,オンオフ間欠性的な時間変動が観測されることが実験的に報告されている.本研究では,この実験を説明する数理モデルを提案し,数理的に解くことによって間欠性の特性を調べている.現在までの研究では,時間的なスペクトル強度のべき則などの特性はオンオフ間欠性に近い結果が得られているが,定量的なずれがあり,まだ同定することはできていない.次年度の研究で明らかにしていきたい. 3.乱流の統計理論は,Kolmogorovによる自己相似カスケード描像を出発として,対数正規理論やベータモデルを典型として乱流の間欠性を取り込む研究が続いてきている.これらの研究の対象は,高Reynolds数を対象にしたものであるが,現在でも実験的には十分な高Reynolds数状態は実現されていない.1993年にBenzi等は中間Reynolds数でも成立する新しい統計則を実験的に発見した.これは,拡張された自己相似性とよばれている.これまで物理的にこの法則を導くことはなされていなかったが,本研究ではフラクタル描像をベースにしてこの法則の成立根拠を明らかにすることに成功した.
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