空間的に広がった系のカオス、時空カオスの理解を深めることを目的としている。 時空カオスの典型的なふるまいの一つに、空間周期構造が時々欠陥構造を生成しながら、ゆっくりと時間変動するというケースがある。対流にみられるような2次元的な周期構造にはロール構造やセル構造がある。ロール構造が大きくゆらぐと新たなロールが生成したり、ロールのつなぎ換えが起こったりする。セル構造の場合は、セル構造が大きくなって分裂したり、小さなセルが消滅したりする。今回は1次元バーガース方程式に不安定項を入れたモデル方程式を解析した。バーガース方程式は一次元乱流のモデルとして出されたが、元のモデルでは十分時間がたつと一様状態におちつく。今回のモデルでは不安定項を導入したことにより、乱流状態が安定な状態として持続する。不安定項によって、バーガース方程式に特徴的なショック構造が自発的に多数生成される。シヨックは互いに異なる速さで進むために、互いに衝突しショックの融合がおこる。ショックの生成と融合過程が不規則に起こるのがこの系の特徴であり、時空カオスの一般的特徴のエッセンスを示していると考えられる。今年度は、ショックの生成融合過程とショックの移動過程を、ショックの位置だけのモデル方程式で記述する試みを行った。ショックの移動過程と近接するショックとの相互作用をある線形方程式で表した。この非常に簡単化したモデル系でも、ショックの位置が不規則に変動しながら、時々ショックの生成融合する様子が再現できた。もとの不安定バーガース方程式の時空カオスの複雑なふるまいを定性的に再現できることがわかった。
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