今年度は、我々がここ数年開発改良を重ねてきた様々な形状の砂丘が発生成長していく過程についての計算模型を拡張し、従来のものよりもさらに現実的で複雑な側面を取り入れた計算模型の構築を試みてきた。 具体的には、砂丘の動力学模型の中に、砂の運動のほかに砂丘の時間発展に影響をおよぼす他の要素、とくに、植生の変化をどのように取り入れるべきか試行錯誤をおこなってきた。その結果、これまでに我々が構築してきた砂丘の動力学模型に適当な植物の成長のルールを加えることで、放物型砂丘の形成過程を再現できる可能性が高いことが判明した。放物型砂丘は、砂床の一部を植物が被覆した場合に形成される砂丘として知られているが、未だその形成過程については未解明な部分が多く、理論模型によるシミュレーションに成功した例はない。もし、シミュレーションに成功した場合、植物と砂丘の相互作用を理論的に扱う稀少な手法として極めて高い注目を集めるものと思われる。我々の模型は、現段階において、数値不安定性などいくつかの改善すべき点は残っているものの、放物型砂丘に類似の砂丘の形成過程がいくつかの限定された条件のもと再現されており、本課題研究が継続する期間中には放物型砂丘を再現する最終的な模型が確立される見通しが立った。 現在までの研究経過は、1999年日本物理学会秋の分科会で報告された。また、本報告研究発表の欄に記した図書のなかでも本研究に関連する内容の記述を行った。
|