研究概要 |
今回の課題研究では、我々がここ数年開発改良を重ねてきた様々な形状の砂丘が発生成長して行く過程についての計算模型を拡張し、従来のものよりもさらに現実的で複雑な側面を取り入れた計算模型の構築を行っている。 今年度は、砂丘の動力学模型の中に、砂の運動のほかに砂丘の時間発展に影響をおよぼす他の要素、とくに、植生の変化をどのように取り入れるべきか試行錯誤をおこなった。その結果、これまでに我々が構築してきた砂丘の動力学模型に適当な植物の成長のルールを加えることで、植生のある砂漠地帯に出現する様々な形状の砂丘の形成過程を再現した。中でも放物線型砂丘は、砂床の一部を植物が被覆した場合に形成される砂丘として知られているが、未だその形成過程については未解明な部分が多く、理論模型によってその形成に成功した例は過去になかった。そのため、今回のシミュレーションの成功は、今後、植物と砂丘の相互作用を理論的に扱う稀少な手法として極めて高い注目を集めるものと思われる。 現在までの研究結果は、コペンハーゲンで行われた砂丘と砂紋に関する国際集会(Pattern Formation in Ripples,Dunes and Related Systems)、およびロンドン大学での講演で報告された。また、本報告研究発表の欄に記した論文雑誌や図書のなかでも本研究結果の内容の公表が予定されている。
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