研究概要 |
本課題研究では、様々な形状の砂丘が発生成長して行く過程についての計算模型を拡張し、従来のものよりもさらに現実的で複雑な側面を取り入れた計算模型の構築を行ってきた。 昨年度まで、砂丘の動力学模型の中に、砂の運動のほかに砂丘の時間発展に影響をおよぼす他の要素、とくに、植生の変化をどのように取り入れるべきか試行錯誤をおこなってきた。その結果、植生のある砂漠地帯に出現する様々な形状の砂丘の形成過程を再現した。中でも放物線型砂丘は、砂床の一部を植物が被覆した場合に形成される砂丘として知られでいるが、未だその形成過程については未解明な部分が多く、理論模型によってその形成に成功した例は初めてである。 今年度は、上の結果をまとめ、植生を含んだ砂丘の形状とそれらの生成条件について観測事実と比較し、定性的な一致を見た。これは、パリで行われた砂丘と砂紋に関する国際集会(Discussion the Formation and Dynamics of Ripples, Dunes and Related Systems)、および、東京でおこなわれた第5回国際堆形学連合集会(5th International Conference of Geomorphology)での講演で報告された。また、論文雑誌のなかでも本研究結果が公表された。 さらに、今回の手法の発展形として川の琉路形成の動力学を他の研究者と共同で扱い始めた。その結果、川の傾斜に応じて川の流路の形状が蛇行から網状に変わるという観測結果を、理論模型として初めて再現した。また、鍾乳洞に見られる多様な鍾乳石の形状の研究も今回の手法の延長で取扱い得ることが現在までに判明している。 上に挙げた一連の研究は、地形の進化過程を非線形物理学の視点から総合的に扱う「計算地形動力学」とでも呼べる、より一般的な体系を構築するためのの土台になりうるものと思われる。
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