本年度は、巨視的輸送に関する現象論としての熱力学の多成分系への拡張を行った。まず、非平衡開放条件下における非線形反応拡散系において、反応が衝突による運動量緩和よりも遅いときには粒子輸送の拡散によって記述でかる。研究協力者若生潤一とともに、反応速度が運動量緩和と同程度の頻度で起こる場合について、拡散のフィックスの法則に到る過渡現象を含むように熱力学を拡張した。これにさらに揺らぎを加えて、ランジュヴァン方程式とし、定常状態における揺らぎを評価した。さらに、解析的に扱えて自明でない運動論的模型をたてた。これは、位置と速度からなる相空間の各点における粒子数の変動についてに対する確率解析し、定常解については良い一致を見た。次に、研究協力者佐野光貞氏とともに、一次元クーロン系についてのBBGKY階層方程式を解析して、一粒子分布関数に対してブラソフ方程式、ランダウ方程式、バレスクレナード方程式の導出を行った。また、研究協力者柳沢剛は、一次元クーロン系のダイナミクスを記号力学に置き換えたときの、文法生成則が有限個になることを発見し、相空間の構造と関連があることを示唆した。
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