一様に分布する正電荷に対して運動する負電荷のシートからなる一次元プフズマシート模型は、一定間隔に分布した平衡点のまわりで調和振動する粒子が隣同士で完全弾性衝突をする系と等価である。したがって、個々のシートの運動を作用変数と角変数で記述すると、衝突するまでは作用変数は一定であり、規則的運動であって、起動不安定性はない。ところが、衝突によって、作用変数はジャンプする。ある初期条件から出発して最初に衝突する粒子対の速度を交換すると、これが次の衝突までの運動の新しい初期条件となる。このようにして、数値的には、解析解を接続してゆく方法で、精密な計算が可能となった。まず、勲伝導度については、非平衡の境界条件として、系の両端に温度の異なる熱源を置き、高温側から低温側へのエネルギーの流れを計算すると、熱伝導度は、熱源が低温である限り、正常である。すなわち、熱伝導度は系のサイズに依存しない。ところが、熱源の温度を高くすると、熱伝導度は系のサイズと共に大きくなる。この異常性の微視的機構を見るために、位置と速度からなる相空間の構造を見ると、高温では、捕捉された粒子と、バリスティックに運動する粒子が見られる。後者はほぼ自由粒子のように振舞う。一方、低温では、急速にマクスウェル分布、すなわち、局所平衡に収束する。また、孤立した条件で、escape rate formalismによって、熱拡散の二乗平均を取ると、低温では、時間に比例することが分かる。すなわち、熱伝導度が正常であれば、Green-Kubo公式は成り立つことが分かる。
|