研究概要 |
世の中にはさまざまな種類の乱流があるが,どのような乱流中にも共通に存在する普遍的な渦構造が見られる。それは細長い管状の旋回渦で,乱流の種類ごとにそれぞれ特有の名称で呼ばれている。壁乱流の流れ方向渦,自由剪断乱流のロール,等方乱流のワームなどである。これらの旋回渦は,乱流拡散や混合,乱流エネルギーの生成,乱流の統計法則,等々,乱流力学において重要な役割を演じていると考えられている。しかし,3次元で非定常な流れ場の中で,これらの渦を抽出し,可視化し,そして,その運動法則を解析することは容易ではなかった。われわれは,流れ場の圧力の極小(適当な面内の)線を中心軸とし,その軸のまわりに旋回流が存在する領域を芯とする「低圧力渦」の方法を開発し,乱流場の渦構造,およびそれらの相互作用を詳しく調べた。具体的には,[1]渦軸を取り巻く二重らせん渦,[2]旋回渦対の反平行接近の普遍性,[3]渦のつなぎ替え,等々の現象を捉えた。それぞれ3次元の動画を作成し,その時空間構造をわかりやすい形に表現した。この方法を剪断流や境界のある流れに対して応用することによって,乱流力学の解明および乱れの制御に役立たせることができる。現在は,乱流拡散や混合などの輸送現象における渦構造のはたらき,および渦構造自身の物理特性,特にレイノルズ数依存性を調べ,乱流の本質の理解と予測と制御の可能性を探っている。
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