研究概要 |
乱流中に存在する秩序渦の構造,流れとの相互作用,および,乱流拡散や混合,あるいは,磁場の生成,等々の研究を主として,数値シミュレーション解析によって行ってきた。本年度の研究成果は以下の通りである。 [1]乱流中の浮遊線の移流,特に,長さの伸張率の大きさ(乱流特性への依存性等)は,乱流混合率および拡散率を算定する基礎となるもので,従来から多くの研究がある。しかし,伝統的な方法には,統計的取り扱いに基本的な問題があり,真の値を過小評価していた。われわれは,この欠陥を指摘し,正しい統計的取り扱いにより,伸張率を精度よく求めた。 [2]一様等方乱流場の低圧力渦解析により,管状集中渦のまわりにはそれを取り巻く二重らせん渦層が存在し,その中でエネルギー散逸が強く起こっていることを見出した。このらせん渦層は乱流混合とも深く関わっていると思われるが,これについては次年度調べていく予定である。 [3]回転する剪断乱流では,渦構造の形成に著しい特徴がある。それは,回転と剪断のそれぞれによる実効渦度がちょうど打ち消しあう絶対渦度ゼロ状態では,まっすぐに伸び整然とした管状渦が形成されることである。二重らせん渦層の着物を着ていないこのような裸の管状渦は,流れの中の基本構造のひとつとして重要な意味をもつものである。 [4]回転する球殻内で熱対流運動による磁場の生成機構を明らかにした。この系では,熱対流渦と磁場が互いに競合しまた共生し合い,興味深い生成消滅の力学過程の輪廻が現れることを可視化解析により示した。
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