研究課題/領域番号 |
11838001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
新井 昌史 群馬大学, 医学部, 講師 (60270857)
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研究分担者 |
永井 良三 東京大学, 医学部, 教授 (60207975)
倉林 正彦 群馬大学, 医学部, 教授 (00215047)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 心筋小胞体 / SERCA2 / ドキソルビシン / 遺伝子転写 / Egr-1 / ERK / 圧負荷 / Sp1 |
研究概要 |
心筋小胞体Ca2+-ATPase遺伝子(SERCA2)mRNA発現は、心不全で低下し、心収縮力低下をもたらす重要な機序になる。我々は、心筋毒性の強い抗癌剤であるドキソルビシンを用いて培養心筋細胞で心不全モデルを作り、SERCA2遺伝子発現の低下に至る機序を検討した。ドキソルビシン投与下では、SERCA2遺伝子の転写活性が低下しており、mRNA発現の低下はSERCA2遺伝子の転写活性の低下に由来した。ドキソルビシンに最も感受性の高い領域はGC配列に富む近位部(-284〜-72bp)であった。この領域には、複数のSp1、Egr-1、AP2転写因子結合部位が存在する。ドキソルビシン投与下ではEgr-1 mRNAの発現量が著増しており、Egr-1はSERCA2遺伝子の転写を抑制することが判明した。従って、ドキソルビシンの作用はEgr-1を介してSERCA2遺伝子に伝えられると考えられる。実際に、Egr-1のSERCA2遺伝子への結合がドキソルビシン投与群では増加していることや、Egr-1のアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入によってドキソルビシンの効果が減弱するなどが確認された。さらに、Egr-1転写因子を誘導する細胞内情報伝達系はERKであることを明らかにした。 一方、高血圧などの圧負荷により、心臓は肥大から心不全に至る。この時、SERCA2 mRNA発現が低下するが、これはSERCA2遺伝子5'転写調節領域近位部のGC-Box中の上流側から1番目と6番目のSp1結合部位が転写活性の抑制に寄与していることを、in vivo gene transfer法によって明らかにした。 以上、心不全でのSERCA2 mRNA発現の低下は、単にmRNAの非特異的な障害によってもたらされるのではなく、特定の転写因子がSERCA2遺伝子の特定部位に結合して引き起こされる制御された過程である事を明らかにした。
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