研究概要 |
鉱質コルチコイドの心血管作用として、血管反応性や末梢血管抵抗の増大、血管平滑筋の肥大、心筋線維化などが注目されている。アルドステロンは最も強力な鉱質コルチコイドであり副腎皮質球状層で産生されるが、最近血管細胞にもその合成酵素遺伝子(CYP11B2)の局在が証明され,その病態生理的意義について種々の報告がみられる。我々はヒト肺動脈培養内皮および平滑筋細胞においてCYP11B2を検出し、その酵素活性と産生調節機構を種々の実験系で確認してきた。その結果、肺動脈血管細胞にはコレステロール側鎖切断酵素やコルチコステロン合成酵素遺伝子(CYP11B1)が検出されずアルドステロンは副腎皮質と異なる生成経路によって産生されていること、10^<-9>M AngIIによりCYP11B2発現は増強すること、ACTHには反応しないことなどの知見を得た。大動脈においてはCYP11B1も多く発現しており、血管の部位によるステロイド産生能の差が推定される。一方、血管平滑筋細胞には鉱質コルチコイド受容体(MR)や11β水酸化ステロイド脱水素酵素2型が存在することからアルドステロンはその受容体を介してオートクリン・パラクリン機構により作用を発揮していると考えられる。AngIIは種々の増殖・成長因子の刺激作用、酸化ストレス促進作用を介して,高血圧症や動脈硬化症の進展に深く関与するが、アルドステロンはこのようなAngIIの作用も増強することがロイシンの取り込み実験から証明された。以上の結果は血管由来アルドステロンは単独ないしAngIIとの相互作用により血管再構築にも関与することを示唆する。
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