低分子量ストレス蛋白質の一つであるαB-crystallinがある種の細胞の伸展により細胞から遊離されることが報告されているが、今回私共はαB-crystallinの血小板の機能に及ぼす影響およびその機能について検討し、以下の結果を得た。 1.ヒトおよびハムスターの血小板において、αB-crystallinはトロンビンおよびボトロセチンによって誘導される血小板凝集を抑制した。 2.ヒトおよびハムスターの血小板において、αB-crystallinの特異的結合部位が存在した。 3.ヒト血小板において、αB-crystallinはトロンビンによって誘導される細胞内カルシウム動員およびホスフォリパーゼCによるイノシトールリン脂質の代謝回転を抑制した。 4.心筋症ハムスターの血中のαB-crystallinレベルは上昇していた。 5.メカニカルストレスによる血管障害を受けた血管壁のαB-crystallinのレベルは低下していた。 これらの結果より、ある種のストレスにより血管内皮が障害された時、血管壁からαB-crystallinが分泌され、この分泌されたαB-crystallinが血小板の機能を調節している可能性が示唆された。これまでストレス蛋白質は細胞内で作用すると考えられてきた。私共の結果はこのストレス蛋白質が細胞外でも作用することを示すものであり、ストレスに対する新たな生体防御機構が存在することが明らかとされた。
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