昨年度までに低分子量ストレス蛋白質のファミリーに属するHSP20およびαB-crystallinがある種のストレスにより細胞から遊離され、細胞外にて血小板の粘着・凝集を抑制することを世界で始めて報告したが、今回私共は血小板機能の抑制におけるHSP20およびαB-crystallinの活性部位の検討を行い、以下の結果を得た。 1.ヒトおよびハムスターの血小板において、その活性はHSP20およびαB-crystallinのアミノ酸一次構造のC末端側ではなく、N末端側に存在する。 2.HSP20はN末端から16番目のセリンがリン酸化されること、また細胞内において血管平滑筋の弛緩には16番目のセリンのリン酸化が必要であることが報告されている。これらの報告を基に、さらにアミノ酸によるペプチド合成の検討から以下を明らかとした。1)その活性部位は16番目のセリンの前後9コのアミノ酸に存在すること。2)血小板の粘着・凝集を抑制する作用には16番目のセリンのリン酸化は必要ないこと。 これらの結果より、HSP20およびαB-crystallinの細胞内のみならず細胞外での作用においても、そのアミノ酸一次構造のC末端側ではなく、N末端側にその活性部位が存在することが示唆された。一方、細胞外での作用には16番目のセリンのリン酸化は必要ないことが明らかとなった。
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