動脈硬化発症に関与するケモカインであるMCP-1はその濃度勾配による細胞遊走、すなわちケモタキシスと同時にインテグリンの活性化を起こすことが知られている。今回我々は単球系の細胞株であるTHP-1細胞を用いて、トランスウェルによりケモタキシスを測定し、可溶性VCAM-1及びフィブロネクチンに対する接着をみることによりMCP-1によるインテグリンα4β1、α5β1の活性化を測定した。まず、MCP-1によるケモタキシスはMAPキナーゼのなかのp38の阻害剤により完全に抑制され、低分子量G蛋白質Rhoの阻害剤であるC3 exoenzymeによって完全に抑制された。また、MCP-1によるインテグリンの活性化はp38の阻害剤によって抑制されたが、C3 exoenzymeによっては全く影響を受けなかった。また、MCP-1によりMAPキナーゼのなかのERKも活性化することが明らかになったが、このERKの阻害剤によってはインテグリンの活性化もケモタキシスも抑制されなかった。このことから、MCP-1によるインテグリンの活性化にはp38を介したシグナルが必要であるが、ケモタキシスにはp38とRhoを介したシグナル伝達が必要なことが明らかになった。これらの結果によりMCP-1によるインテグリンの活性化はケモタキシスの上流にあってケモタキシスを制御している可能性が示唆された。また、MCP-1からERKへの経路は増殖など別のシグナルにつながっている可能性が示唆された。
|