研究概要 |
低分子量G蛋白rho subfamily(rho A、rho B、rho C、rho G、rac 1、rac 2、rac 3、ccc42)は、細胞形態変化、細胞接着、ストレスファイバー形成、細胞遊走、細胞周期進展等、種々の細胞骨格依存性の機能に関わる重要な一群の蛋白である。近年、このrho subfamilyが、血管平滑筋の収縮や筋細胞の分化にも関与していることが明らかにされている。このrhoA蛋白はその下流に存在するrho kinaseを介して、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素を抑制し、その結果、平滑筋のカルシウム感受性を増加させることがあきらかとなった。そこで、このミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の2つの調節サブユニットをリコンビナント蛋白として作製し、そのスキンド標本に対する効果を検討し、昨年報告した。今年は、さらに、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の調節サブユニット(M21およびM130)のゲノムの構造を明らかにし、その生理機能を明らかにした。 1、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小さい方の調節サブユニット(M21)のゲノムの構造とその生理機能。昨年報告したミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の小さい方の調節サブユニット(M21)の内、心筋特異的に発現するHS-M21をクローニングした。このHS-M21のゲノムの構造を解析したところ、HS-M21がミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の大きい方のサブユニットのひとつのisoformであるMYPT2と同じ遺伝子からalternative splicingにより、そのC末の部分だけが転写されることが判明した。さらにイントロン13に心筋特異的なプロモーターを見出した。HS-M21の生理機能を解析したところ、昨年報告した結果と同様に、血管平滑筋および心筋のカルシウム感受性を増加させることが判明した。さらに、このHS-M21が、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素の大きい方のサブユニットのひとつのisoformであるMYP2と親和性が強く、このことがカルシウム感受性を増加させる機序と考えられた(Arimura et al.,J Biol.Chem.in press)。
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