繊維性I型コラーゲン(CL)によるαvβ3インテグリン依存性細胞遊走能の調節を、ヒト血管平滑筋細胞(SMC)を用いて検討した。ビトロネクチン上でのSMCの遊走はαvβ3インテグリン阻害により抑制されたことより、ビトロネクチン上でのSMC遊走はαvβ3インテグリン依存性と考えられた。また、繊維性CL上で24時間培養したSMCでは、ビトロネクチン上のplatelet-derived growth factor刺激による遊走が抑制されたが、単体CLおよびフィブロネクチン上での遊走は抑制されなかった。この際、繊維性CLはSMCのビトロネクチンヘの接着に大きな影響を与えず、αvβ3インテグリンの発現量にも影響を与えなかったが、αvβ3インテグリンの接着斑への集積が著明に抑制されていた。このことは繊維性CLがαvβ3インテグリン機能を抑制し、SMCの遊走を阻害した可能性を示している。αvβ3インテグリン機能を調節する可能性のある因子としてplasminogen-activator inhibitor-1(PAI-1)が報告されている。ビトロネクチン上でPAI-1蛋白はαvβ3インテグリンと共染色され、繊維性CL上で培養したSMCでは、PAI-1の接着斑への集積が阻害されていた。繊維性CLによるビトロネクチン上でのSMC遊走抑制はPAI-1添加により回復し、反対にSMCのビトロネクチン上での遊走はPAI-1阻害抗体により抑制された。この結果よりPAI-1はαvβ3インテグリン機能を調節しSMCの遊走に影響すること、繊維性CLによるαvβ3インテグリン依存性SMC遊走能抑制にPAI-1が関与する可能性が示された。
|