研究概要 |
血管内皮細胞は血栓抑制因子と形成因子の両者を産生する.健常な内皮細胞では両者の発現バランスにおいて抑制因子が優位であるため,血栓形成は抑制され血流が維持されている.しかし,内皮細胞が炎症性サイトカインや細菌性毒素などの様々な刺激を受けると,血栓形成因子の発現が優位となるため血栓が生じやすく,多臓器不全や脳梗塞など重篤な疾患を引き起こす.血管内皮細胞が産生する血栓形成因子として組織因子(TF)が知られており,内皮細胞が組織壊死因子(TNF-α)などの炎症性サイトカン刺激を受けると発現が誘導される.一方,アンチトロンビンIII(AT-III)は血流中に存在するトロンビン阻害タンパク質で内皮細胞のPG12産生を促進することが知られ,内皮細胞の抗血栓性維持に寄与していることが推測されている.本研究は内皮細胞がTNF-α刺激を受けてTFが発現誘導するのをAT-IIIが抑制し,PG12産生以外にも内皮細胞の抗血栓性維持に寄与しているか否かを検討した. 1.培養血管内皮細胞にTNF-αを添加すると,添加後6から8時間をピークにTFの発現が認められ,発現量はTNF-αの添加量に依存していた. 2.TNF-α刺激によって発現したTFは転写レベルの活性化によることが明らかになった. 3.TNF-α刺激によって発現したTFをAT-IIIは用量依存的に抑制した. 4.AT-IIIのTF発現抑制はTFmRNAの低下によることを明らかにした.
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