研究概要 |
内皮細胞は炎症時にELAMやICAMそしてVCAMなどの白血球に対する接着因子を産生し,内皮細胞障害を促進させることが知られている.その白血球接着因子としては白血球の内皮細胞へのローリングを引き起こすELAMなどのE-selectinがtriggerとして最も重要である.抗がん剤の一つとして汎用させているブレオマイシンは副作用として肺線維症を引き起こし,本剤の使用量が制限されている.本研究では,肺血管内皮細胞がブレオマイシンに曝されると,ELAM-1を産生誘導し,そのため白血球が内皮細胞に接着しやすくなり,その後,白血球が内皮下組織に浸潤して肺線維症を引き起こすのではないかと考え,その機序の検証とアンチトロンビン-IIIがELAM-1誘導を抑制し,肺線維症の予防および治療効果をもつか否かを検討した. 1)ヒト臍帯から調製した培養内皮細胞に,1〜5μMのブレオマイシンを曝すと,ELAM-1の転写活性が濃度依存的に6時間をピークに高まり,抗原量はそれに2時間ほど遅れて発現上昇することが明らかになった. 2)ブレオマイシンによるELAM-1の転写活性の増加はELAM-1遺伝子のプロモーター領域にあるNF-κB/Rel結合配列にp65/p50から成る活性化NF-kBがその配列に結合するためであることが明らかになった. 3)1および2の結果は作業仮説通り,内皮細胞はブレオマイシンに曝されるとELAM-1を発現誘導し,内皮細胞障害に直接関与していることを示唆している. 4)NF-kBの活性化をアンチトロンビン-IIIが抑制するか否かを検討したが,種々の濃度およびアンチトロンビン-III作用後12時間以内でNF-kBの活性化およびELAM-1の発現誘導を抑制することはできなかった.
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