研究概要 |
本研究の目的は、動脈硬化巣形成に対するiNOSの影響を明らかにし、病巣におけるNO、スーパーオキサイド、ONOO^-の相互反応の解析に基づいて、動脈硬化巣での活性小分子の役割を明確にすることである。iNOSのノックアウトマウス(iNOS^<-/->)と野生型のマウス(iNOS^<+/+>)を用いて下記の項目を検討した。 1.マクロファージによるLDL酸化とのアポトーシス誘導の両群における比較 2.マクロファージのLDL酸化能とチオール放出能の両群での比較 3.高脂肪食摂取後の大動脈起始部硬化巣の両群における面積の比較 4.動脈硬化巣内の集積細胞分布の両群における比較 5.両群におけるiNOS発現とニトロチロシン生成の有無と生成細胞 11年度においてiNOS^<-/->とiNOS^<+/+>の2群で目的1と2の実験が終了した。 12年度の検討で下記の項目が明らかになった。 1.高脂肪食投与15週目に大動脈起始部に両群とも有意な動脈硬化巣が見られた。 2.硬化巣の面積は、iNOS^<-/->:285±73×10^3μm^2,n=10で、iNOS^<+/+>:293±82×10^3μm^2,n=10と両群で差がなかった。 3.大動脈のHomogenateではiNOS^<+/+>ではiNOSが誘導された(iNOS^<-/->では陰性)。これはmRNA、iNOS蛋白、iNOSの組織染色全てで示すことが出来た。 4.ニトロチロシン染色もiNOS^<+/+>のみ認め、iNOS染色陽性部と一致していた。 5.iNOSとニトロチロシンは主としてにマクロファージに認められた。 6.動脈硬化巣のコラーゲン染色によってiNOS^<+/+>ではiNOS^<-/->に比較しコラーゲン組織が有意に減少していた。 コラーゲン線維の有無は動脈硬化巣の脆弱性を決める重要な因子である。コラーゲン線維の減少は、動脈硬化巣が破綻し易い事を示し、acute coronary syndrome(急性冠不全症候群)に結びつく事が分かっている。したがって、本研究の成果は、心筋梗塞の予防に関する臨床的にも有用な新知見である。
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