1.AT1増殖シグナル伝達における成長因子受容体(EGF-R)共役活性化(transactivation)機構:ラット培養血管平滑筋ならびに心筋線維芽細胞をAngIIで刺激後、免疫沈降-ウェスタン・ブロットを行い、EGF-Rの顕著なリン酸化を証明した.ERKのリン酸化も確認したが、これらのAngIIの効果はAT1介するものであった.次にAT1刺激によるERKの活性化はEGF-R特異的阻害薬であるAG1478の前処置さらにはEGF-Rのチロシンリン酸化部位を欠失した変異型であるHEGFR533dclを細胞内に形質導入することによりほぼ完全に抑制された.細胞内キレート剤やCa/Calmodulinキナーゼ阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬の前処置でAngIIによるEGF-Rのリン酸化は有意に抑制されたが、プロテインキナーゼCの阻害薬では影響されなかった.以上から、血管平滑筋ならびに心筋線維芽細胞におけるAT1によるEGF-Rのリン酸化はCa/Calmodulin依存性チロシンキナーゼを介しており、AT1のシグナル伝達におけるERKの活性化はEGF-Rリン酸化の下流に存在すると考えられる. 2.AT1によるEGF-R共役活性化を介した遺伝子発現:Fibronectin(FN)はAT1刺激により発現亢進するが、その増加作用はEGF-R特異的阻害によりほぼ完全に抑制された.また、AT1はFN遺伝子のプロモーター領域に存在するAP-1に結合するc-fos、c-junの活性化を介してFNの遺伝子発現を亢進させるが、AG1478添加時はその結合が阻害され、FNプロモーター活性を抑制することが明らかになった.
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